昼寝用仮眠室

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ブルーピリオド(1)

クリエイティブな題材で一番好きかも

本日の議題です。

ブルーピリオド(1) (アフタヌーンコミックス)

ブルーピリオド(1)

 

やたら周りの評価が高かったので手を出す流れ。

 

概要

友人と夜の街を徘徊する矢口八虎は人当たりもよく学業も優秀、多少のむなしさを覚えつつも「上手くやる」ことにかけては一目置かれる存在だ。学校、美術の時間、好きな風景の絵を描く課題に書くものがない八虎は少なくなった残り時間で夜遊びも終わりに近づく頃の青い朝の渋谷を描く。 結局完成しなかったことを心残りにしつつも絵を評価された八虎は絵に興味を持ち始めるのだった。

 

登場人物

矢口八虎:面倒見がよく頭も回るヤンキー。めっちゃいいやつ。俺みたいだな(絶対違う

鮎川龍二:常に女装している美術部員。ゆかちゃんとよばれている。めっちゃいいやつ。俺みたいだな(大事なことなので

 

感想

面白い。

 

サクセスストーリーになるのか、現実の厳しさを知る話なのか、落としどころが全く見えないのがまずやっぱりいい。 何にも興味も持てないがなんだってやれる万能感、それを向ける方向性が定まらないという悩みは若者の普遍的な所有物の一つに数えられるのではと思う(現在進行形で私も手探りですが)。少なくともそれを見つけられたという幸運自体は手に入れることができた八虎、部活で予備校で絵を描くことを楽しみながらも成長していく内容に満足の密度が高い。

 

小ネタやデッサンの基礎を実際に先生が初心者の八虎に教えるという形で読者にもうざくない程度に説明したりとすごく丁寧、すごく自然に話に入っていける。部活のメンバーも得意分野がとがっていて説明することを容易くしているし、対比もできる。そしてそれがそのままキャラを立てることに繋がっていて本当に構成から何から何まで考えられている。 しかしクリエイティブさを前面に押し出す熱量みたいなものも伝わってくるし減点法ですらなかなか減点要素が見つけられないのでは。

 

そして、なんでもやってみろタイプの父、ステレオタイプに安定を求める母、その環境下で母が進路希望の紙を見てしまって「なんで」と思いひと悶着あるのかと思いきや八虎の二か月の絵の成長を見て応援する気になるところ、俺はここに感動した。 展開の作り方に余白がある。 普通の漫画だったらここは家族会議が起こったりして展開の引き延ばしや時間稼ぎ、八虎が直面する現実的な壁として描かれてもなんら違和感がないところだろう。 だけどそれってこの話だと水を差す可能性が凄く高い、この熱を下げる方向にいってしまうと感じる。 そこに安易に手を出さなかった。 見せたいものが何であるのか、それをよくわかっているからこその芸当だろうと推察する。 俺はこの進路希望の話が出た時に少しげんなりすることになるだろうと構えていたんだけども、気持ちよーく終わったので本当に関心した。

 

これは一巻で高まりすぎたのでどんな気持ちで続きを待てばいいのか加減がわからない程度だぞ…